取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
「最近、大藤神社の方からよくない話を聞きまして」
 大藤神社ともつきあいがあると言っていたが、いったいどんな話を聞いたのだろう。

「御主人は、大藤神社で宮司に『どろぼう、恩知らず』と怒鳴られていたそうです」
「そんな」
 優維は驚きのあまりスマホを取り落とした。かつん、と音がしてスマホが床に転がる。
 聖七はそれを拾い、優維の手をとって落とさないようにしっかりと握らせる。

「すみません、驚いてしまって」
「私こそすみません。でも黙っていられなくて。噂だけならともかく、この木彫りは内部の人しか持ち出せないでしょう?」

「だけど……」
「借金はご主人が返したそうですが、そのお金はどこから?」
「それは……」
 二千万なんて、普通に生活していてあの若さで貯められる金額ではない。

 仮想通過で得たお金だと言われて信じていた。だが、果たして真実なのだろうか。
「私には盗品売買をしたとしか思えません。日本の仏像などは海外で高値で売れます。彼は大藤神社で窃盗をしてバレたのではないでしょうか。宮司の娘とも特別な仲だったようですし、その油断を利用したのでしょう」

「そんな、こと」
 否定しようとした優維の脳裏に、大藤神社の娘の佳世の姿がよぎる。
『父のことなら心配しなくていいの。今は許してくれてるわ、だから戻って来てほしい』
 符合してしまう。盗みがバレて、それでふたりは別れさせられたのか。
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