取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
「そうか。お義父さんは君に負担をかけるのを嫌がってるからかな」
「うん……」

「修理から戻ったら一番に見せてもらおう。あれは年代不詳で作者不詳だけど猫らしい凛々しさと木のぬくもりがあって、いい神像だ」
「そうね」
 彼の誉め言葉が純粋に聞こえない。高く売れそうだ、と頭の中で変換されてしまう。

「帰ろうか」
 いつものようにやわらかな笑みを浮かべ、彼は優維に手を差しだす。
 この手をとっても大丈夫なのか。
 だけど、手を取らないと、警戒を悟られてしまう。

 恐る恐る手を握ると、ぎゅっと握り返された。
 彼の隣に寄ると、ふいに抱きしめられる。

「怖いのか?」
 言われて、びくっと体を震わせた。
 駄目だ、こんなんじゃバレちゃう。
 心臓がどきどきした。
 いつかの甘い動悸ではない。暑さのせいだけではない汗がにじみ、ごくりと唾を飲み込んだ。

「それとも、俺が信用できない?」
「え……?」
「最近、俺を避けてるよな」
「それは……」
「俺がなにか嫌なことをしたのか? 結婚が嫌だったのか?」
< 85 / 148 >

この作品をシェア

pagetop