取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
「ヤクザが正義を追及して神主が不正をしているなんて、まったく皮肉な話ですね」
 彼がぽつりと言い、優維は首をふる。
「杜澤さんはヤクザじゃないですから」

「あなたは優しいですね」
 顔を伏せていてる優維を、彼は愛しげに見つめる。

「ここからは慎重に動かないといけません」
「だけど、どうしたらいいのか……」
「警察に行きますか? ですが、そうなると」
 聖七がためらうように言葉を切る。その先は聞きたくなくて、優維はまた首をふる。

「すみません、時間をくれませんか」
「早く対処しなくては被害が増えるかもしれません」
「なるべく早く考えますから」
 うつむいたままの優維に、聖七は目を細める。

「安全のため、神像は私が預かっておきます」
「ありがとうございます」
 優維は深々とお辞儀をした。
「これくらい、いくらでもいいですよ。あなたのためになれるのなら」
 顔を上げると聖七の甘い笑みがあり、優維は目をそらした。



 遅くならない程度にソフトドリンクで軽食を摘まみ、優維は聖七と一緒に店を出た。
 彼は優維をタクシーに乗せ、笑顔で見送ってくれた。
 彼の優しさに甘えてばかりだ。
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