取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
「面目ない。婿が払ってくれまして、なんとかなりました」
「その婿さんですがね、よくない噂を聞きましたよ」
 勇雄の言葉に優維はどきっとした。気になって総代たちの後ろで成り行きを見守る。

「どんな噂ですか」
 動じた様子もなく千景が尋ねる。
「大藤神社で窃盗を働いたとか」

 切り裂くように閃光が走り、衝撃音とともに轟音が響く。
 優維は息を飲んだ。ここでこんな話が出るなんて思いもしなかった。
 ぽつぽつと雨が屋根を叩き、雨脚はすぐに強くなる。

「神に誓って、そんなことはしていません」
 千景は毅然と否定した。
「そんな噂、聞いたことがない」
 直彦はただただ驚く。

「大藤神社の宮司に確認をとりましたか?」
 千景の問いに、勇雄は苦い顔をした。
「聞いたが否定された。だが、不祥事は隠されるものだ」
「話にならない」
 思わずと言った様子でつぶやく千景に勇雄は激高した。

「ふざけるな! 犯罪者がいけしゃあしゃあと!」
「島岩さん、落ち着いて」
 総代のひとりが止めるが、勇雄はさらに怒鳴る。
「お前なんぞに優維ちゃんの夫が務まるか! 知ってるぞ、ここでも神像を盗んだだろう!」
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