取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
 優維は震えながらお盆を握りしめた。
「どういうことですか」
 千景がけげんに聞き返す。

「神像が海外のネットオークションに出されていた!」
 勇雄がスマホを取り出し、その画面を示す。
「おい、見せてくれよ」
 隣にいた総代が言い、勇雄はスマホを見せる。

「わ、私にも見せて下さい」
 直彦が彼に歩み寄り、画面をのぞき込み、うなる。
 勇雄は別の総代にも順番に画像を見せて行った。ざわめきが会場に満ちる。

 最後に見せられた千景は息を飲み、顔をしかめた。
 ざわめきを裂くように雷光が走り、轟音を立てる。

「神像は修理に出しているはずでは?」
 千景は直彦を見る。
「いや、まだだ、見積もりには来てもらったが、予算が合わなくて出してなかった」
「では盗まれたんですね」

「しらばっくれるな。こっちには証拠があるんだからな」
「証拠ってなんですか」
 優維は思わず口にしていた。
 勇雄ははっとして、それからバツが悪そうに目をそらした。

「すまない、優維ちゃん。この前、君が杜澤さんと一緒にいるのを見てね」
 千景に険しい目で見られ、優維は顔をそむけた。
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