取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
「杜澤さんを問い詰めたら、君と一緒にこの男の不正を調査していると聞かされた」
「調査っていうか……」
 自分は知らされた立場で、調査と言えるほどのことはしていない。

「だから様子がおかしかったんだな」
 千景の言葉に、優維はなにも答えられない。

「今日ここに来てもらっている。杜澤さん!」
 開け放した扉に勇雄が声をかけると、外に通じる廊下から聖七が現れた。その手には猫の神像がある。
 雷光が走り、一瞬、強く影が落ちた。続けざまに轟音が響く。

「それは……どうしてあなたが!?」
 千景が声を上げる。
「ネットオークションで落札した。この神社の木像に似ているのが気になって」
 聖七が言う。

「見せてください!」
「あなたには渡せない。根古間さん、確認してくださいますか」
 直彦は立ち上がり、聖七から受け取って確認する。上下左右をひっくり返してしげしげと見つめたあと、ため息をついた。

「確かに、うちのものです」
 直彦は千景を見る。自分じゃない、というように千景は首をふった。
「警察を呼びましょう」

「呼べるわけないだろう! 夫が犯罪者だなんて優維ちゃんの名誉にかかわる! お前はこちらが警察沙汰にしたくないのを見越してるんだ、とんでもない悪党だ!」
 勇雄が怒鳴り、優維はびくっとした。
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