取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
「私はやっていません。犯人を捕まえるには警察に頼むしかありません」
 千景はあくまで冷静だ。
「——警察を呼ぼう」
 難しい顔をして直彦が言う。

「警察はやめたほうがいいのではないですか」
 聖七が言い、全員が彼に注目した。
「彼女のためにも、神社のためにも。木像が戻ってきたことですし」

「黙って許せって言うのか! とんでもない裏切りだぞ!」
 勇雄が怒鳴る。
「ただ彼を許せと言っているわけではありません」
 聖七が言葉を切ると、また全員の視線が彼に集まる。

「優維さんと離婚して神社を出て行ってもらいましょう」
「そんな……」
 優維は言葉を続けられなかった。

「そうだ、それがいい」
 勇雄は納得したように頷くが、千景は険しい顔をしていた。総代たちはざわめきながら顔を見合わせている。

「承服いたしかねます。私は窃盗犯ではないので」
「この後に及んでまだ言うか」
 毅然とする千景を勇雄が睨む。

「犯人が警察を呼ぼうなんて言うわけないです」
 優維は千景に加勢したが、
「それだと彼の両親にも連絡が行くでしょうね」
 聖七に言われて、絶句した。
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