取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
 人の良さそうなご両親だった。もし彼に窃盗疑惑がかかっていると知ったら、どれほど驚き嘆くだろう。
「あなたの存在は優維さんのためにならない」
 聖七が断言し、総代たちに向き直る。

「彼に神職を続けてほしい方、いらっしゃいましたら挙手を」
 ざわざわと会場がざわめき、誰ひとりとして挙手しない。

「そんな聞き方、ずるいわ」
「では聞き直しましょう。彼に神社を辞めてほしい方は挙手を」
 勇雄が真っ先に手を挙げる。ざわめきが走り、おずおずとやがては全員が手を上げた。

「こういう結果となりました。みなさま、ありがとうございます」
 すっかり聖七が仕切っているが、それには誰も口をはさまない。

「そんな……」
 優維は青ざめた。神社の総代会は人事に口を出す権利がある。それがここで発揮されるとは思わなかった。

「優維ちゃんはみんなにとっても娘や孫みたいなものだ。悪党に騙されて、黙っていられない」
 勇雄の言葉に、そうだそうだ、と声が上がる。
「宮司にも責任をとってもらわないといけないな」
 悔しそうに、勇雄が言う。

「借金が返せなくなる経営に、神宝を流出させた責任がある」
「だけど、そしたら誰が次の宮司を」
 総代のひとりが言い、勇雄が答える。
「しばらくは我々が管理をして募集をかけよう。もともと我々が手伝ってようやく成り立っているところだ」
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