取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
「彼女に任せるのがいいと思います」
 なにかに負けたかのように、千景が言う。
「彼女は神社を大切にしています。私は引継ぎをして出て行きます」
 優維は目をみはって彼を見た。

「真偽はともかく、ここまで信じてもらえないなら続けることは難しいですから」
「でも!」
「優維、もうやめなさい」
 粘る優維を、直彦が止める。

「すみません、今日はここまでにさせてください。この不始末について家族で話をさせてください」
 直彦が頭を下げる。
 不始末だなんて、まるで彼が犯人みたいだ。
 優維は悔しく歯噛みする。だが、自分だって彼を疑っている。人のことばかり言えない。

「みんな、それでいいか」
 勇雄が尋ねると、総代たちがばらばらに頷いた。
「杜澤さん、神像は私が責任をもって買い取ります。しばらく預かっていただけますか」
「ええ、いいですよ」
 聖七は快く頷く。

「宮司はきちんと監視して、こいつが変なことをしないようにしてくれよ」
「わかりました」
 勇雄の言葉に直彦が悄然と頷く。
 叩きつける雨の音が響く中、優維はただ呆然と彼らを見る。
 激しくなる雨にけぶり、見える景色はすべてがグレーだった。
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