取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
「私でよければいつでも力になります」
「……ご迷惑はかけられません」

「元ヤクザの息子では頼りになりませんか」
「そういうわけじゃないです」

「だったら、いつでも頼ってください」
「……はい」
 言質をとられ、優維は目をそらした。
 元ヤクザの息子だから駄目なのか、と問われると、そうじゃないと答えるしかなくなってしまう。

「なにかあったらいつでも連絡してください。……なにもなくても連絡くださっていいのですけどね」
 え、と思って聖七を見ると、彼は微笑して甘く優維を見つめている。

「では今日はこれで失礼します」
 聖七が背を向けて傘をさす。
「お気をつけて」
 声をかけると、彼は歩きながら軽く手を挙げて去っていった。
 雨に消える背をしばらく見つめてから、優維は振り返る。

 と、そこには千景がいた。暗い瞳で聖七の背をにらみつけてから、優維を見る。
「あの男とはいつから」
 まるで浮気を問いただす言い方だ。
 だが、色恋沙汰ではなくともまるで裏切りだ。残業と偽って水族館に行き、居酒屋に行き、聖七と密談していた。
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