「「完全なる失恋だ」」と思っている夫婦ですが、実は相思相愛です!~無愛想な脳外科医はお人好し新妻を放っておけない~
「いいえ、とんでもないです。今日は本当にお世話になりっぱなしで」

 あらためて考えると、南雲先生とは不思議な縁だなと思う。

 今日はじめて会ったのにこうしてご自宅に泊めていただくなんて、自分でも驚いている。

「世話ってほどのことはしたつもりないんだけど。あの怪我をした女の子は君がいて心強かったと思うし、俺としては適当に過ごそうと思っていた日に花火もうまい飯も食べられたのは君と出会ったからだから。そんなに気にしないでいい」

「そういってくれると気持ちが楽になります」

 明らかに迷惑をかけているにもかかわらず、彼の気遣いに心があったかくなる。

「あの時出会ったのが南雲先生でよかったです」

「そうか。まあ医者って言っても専門外だけどな」

 なんとなく静かになるのが、気まずくてあれこれと聞いてしまう。

 よくよく考えればあれこれ聞いて失礼だったかもしれないが、彼は嫌な顔せずに答えてくれる。

 その合間に彼に聞かれて私も自分の話をする。

「そういえば急にさそったけれど、家族や彼氏にはちゃんと連絡したのか?」

「はい。弟にはさっきメッセージを送りました。彼氏はもうずっといないのでその心配はいりません!」

 南雲先生からしたら困っている私に手を差し伸べただけなのに、もし私に彼氏がいたとしてとばっちりでも受けたら目も当てられないだろう。聞かれて当然だ。

「たしかにちょっとブラコンですけど、別に独身主義ってわけじゃないんです。むしろ早く結婚したいなって思っていて」

 焦ってなんだか変なことを口走ってしまった。慌てて口を押えたけれど、出てしまった言葉はもう二度と私のもとには戻ってこない。

「ずいぶん、話が飛躍するな」

「すみません、今日あったばかりの人に」

「そういう相手だからできる話もあるだろう」

 それはそうかもしれない。彼が嫌でないのなら、少し話を聞いてもらいたくなった。

「すごくつまらない話なんですけど、聞いてもらえますか?」

「ぜひ」

 行きがかりで泊めることになった相手との夜。

 そんな関係だから話せることも言えることもある。

「うちは両親はすでに他界していて。父は私が小学校に入る前に事故で、母が亡くなったのは私が高校を卒業する年で弟はまだ中学三年生でした。それからずっとふたりで暮らしています」

「なんとなく〝姉〟って雰囲気がする」
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