「「完全なる失恋だ」」と思っている夫婦ですが、実は相思相愛です!~無愛想な脳外科医はお人好し新妻を放っておけない~
「ただいま」
「おかえり~」
自宅に到着するとソファでスマートフォンを見ていた与人が声だけで返事をした。
「これ、お土産ね」
お土産の定番、おんせんまんじゅうを渡す。
「ありがと~」
受け取るとすぐに立ち上がって、お茶を淹れにいってくれる。
最近は時々こんなふうにお茶を淹れてくれたり家事を手伝ってくれたりする。
きっと彼女のいい影響を受けているのだろう。
「はぁ」
旅行はとても楽しかったしリフレッシュになったけれど、自宅は自宅でほっとする。
与人が淹れてくれたお茶を飲みつつ当然旅行の話になったのだけれど。
「どうだった、久しぶりの旅行」
「どうって……」
突然今朝のキスを思い出して、赤面してしまう。
なんで……一番に思い出すのが南雲さんなの?
景色のいい場所で広いお風呂とおいしいごはんを堪能し、観光だって楽しんだのに。一番印象に残っているのが彼だなんて。
「どうかした?」
「ううん、何でもない。ありがとう、本当に楽しかった」
スマートフォンに残した旅行の思い出を与人に聞かせる。
「今度彼女と行ってこようかな」
「そうしなよ、すごく雰囲気がよくて素敵な町だったよ」
そう言いながら荷物の片づけをしている間、旅の思い出とともに浮かんでくるのは南雲先生の顔だった。


