だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
『実は、貴美子さんはラ・パレット・デ・サヴ―ルをチェーン店化するように持ちかけてきたんだ』
「嘘でしょ……」
兄のこだわりは相当に強くて、お店の経営に関して細部まで気を配っている。だからこそ、世界中で認められるまでのレストランに育ったのだ。
そして初心を貫き続ける姿勢も含めて、素晴らしいお店だと評価されている。それは、実際にあのお店を紹介した雑誌にも書かれていた。
チェーン店化してしまえば、すべてにおいて同じレベルでこだわるのは難しい。希少価値だって失われてしまう。
兄の目も隅々までは届きづらくなり、お店の質は変わってしまうかもしれない。そうなれば客も離れていくだろうし、兄やスタッフのこれまでの努力はすべて無駄になる。
一度高評価を受けたお店が評判を落としたら、存続さえ危うくなるだろう。
『うちのシェフのオリジナルレシピをすべて提供しろと言われたが、もちろん応えられない』
「当然だわ」
兄は国内だけでなく、何度も海外にまで足を運んでお店の料理を任せられる理想のシェフを探していた。
フランスでようやく自分の求めていたものに合うシェフを見つけたが、すぐにうなずいてもらえたわけではない。一年近く足しげく通って、時には仕事とは無関係の趣味の話なんかで盛り上がって信頼関係を築いていったと聞いている。
国内ならともかく、外国へ行くのはシェフにとっても大きな決断になる。しかも雇われる先はその時点では有名店でもなんでもなくて、これから新しく創り上げていくレストランだ。
たとえ料理に関して自分の思うように振る舞っていいと許可をされても、失敗する可能性だって大いにある。上手くいく保証など、当然どこにもない。
これまで築いてきたものを手放して日本に渡るのは、シェフにとっては賭けのようなものだったはず。
お店で提供されるのは、伝統的なフランス料理ばかりではない。シェフが独自に考案した、創作料理がいくつもある。それは本人が年月をかけて作り上げてきたレシピで、値段をつけられるようなものではない。もちろん、他人に容易に提供もできない。
そういった裏の事情を知らなくても、オリジナルレシピを提供しろだなんて簡単に口にしてはいけないことくらい、部外者である私だって理解している。
「嘘でしょ……」
兄のこだわりは相当に強くて、お店の経営に関して細部まで気を配っている。だからこそ、世界中で認められるまでのレストランに育ったのだ。
そして初心を貫き続ける姿勢も含めて、素晴らしいお店だと評価されている。それは、実際にあのお店を紹介した雑誌にも書かれていた。
チェーン店化してしまえば、すべてにおいて同じレベルでこだわるのは難しい。希少価値だって失われてしまう。
兄の目も隅々までは届きづらくなり、お店の質は変わってしまうかもしれない。そうなれば客も離れていくだろうし、兄やスタッフのこれまでの努力はすべて無駄になる。
一度高評価を受けたお店が評判を落としたら、存続さえ危うくなるだろう。
『うちのシェフのオリジナルレシピをすべて提供しろと言われたが、もちろん応えられない』
「当然だわ」
兄は国内だけでなく、何度も海外にまで足を運んでお店の料理を任せられる理想のシェフを探していた。
フランスでようやく自分の求めていたものに合うシェフを見つけたが、すぐにうなずいてもらえたわけではない。一年近く足しげく通って、時には仕事とは無関係の趣味の話なんかで盛り上がって信頼関係を築いていったと聞いている。
国内ならともかく、外国へ行くのはシェフにとっても大きな決断になる。しかも雇われる先はその時点では有名店でもなんでもなくて、これから新しく創り上げていくレストランだ。
たとえ料理に関して自分の思うように振る舞っていいと許可をされても、失敗する可能性だって大いにある。上手くいく保証など、当然どこにもない。
これまで築いてきたものを手放して日本に渡るのは、シェフにとっては賭けのようなものだったはず。
お店で提供されるのは、伝統的なフランス料理ばかりではない。シェフが独自に考案した、創作料理がいくつもある。それは本人が年月をかけて作り上げてきたレシピで、値段をつけられるようなものではない。もちろん、他人に容易に提供もできない。
そういった裏の事情を知らなくても、オリジナルレシピを提供しろだなんて簡単に口にしてはいけないことくらい、部外者である私だって理解している。