だって結婚に愛はなかったと聞いたので！～離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?～

　通話を終えて、大きくため息をつく。

　兄と和也さんの事業に関しては、もう深く悩まないようにすると心に決めていた。その上で和也さんとの関係を再構築していきたいと、私自身が望んでいる。

　でも今回のお母様の振る舞いは想定外すぎて、私の中では許容できる話ではなかった。

　私が和也さんと結婚したせいで、兄は大きな迷惑を被っている。
　お母様がすんなりあきらめてくれればいいが、彼女にとって兄のお店を自由に利用できるのは一種のステイタスになっているようだ。これからも唐突に席を確保しろと要求したり、今回のように経営に口をだしたりするのだろう。

　この話を今すぐ和也さんに知らせようかと頭を過ったが、忙しくしている彼の手を煩わせたくないと考え直す。たとえ連絡を入れたところで、離れていては身動きが取れない。

　それに、出張中の予定は会議や視察など内容が盛りだくさんだと聞いている。
　出発前だって体調を崩した私につきっきりで、慌ただしく準備をしていた。そんな彼を、これ以上困らせたくないという思いも大きかった。

　ひとまず兄が上手く立ち回ったおかげで、お母様も引いてくれたようだ。それなら和也さんが帰宅してから、きちんと顔を合わせて話をした方がいい。

　今のところは、私の心にとどめておこう。ようやくそう決めると、やり残した家事を片づけてしまおうと立ち上がった。