だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
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「桐島さん。牧田商事のオーガンジーなんだけど、色のバリエーションがあれば追加でサンプルを送ってくれって奥寺さんから連絡が入ってます」
「わかりました。すぐに確認してみますね」
「それから和風の生地も使ってみたいそうで、そちらも参考になりそうなもののサンプルがほしいそうです。詳しい要望は、奥寺さんからのメールを転送しておいたので確認してください」

 奥寺さんからの要望に見合う生地を探すだけでなく、こちらが渡したサンプルから刺激を受けて彼がデザインする場合もある。

 和物に強いのはどこの会社だったかと考えながら、受話器を手に取った。
 新ブランドのサンプルは、すでに二点上がってきている。どちらもデータでは目にしていたけれど、それがいよいよ具体物として出来上がってくると、職場内が一層盛り上がる。

 このブランドが目指すのは、オフィスでもプライベートでも着たくなる服。定時後のデートや友人との食事もそのままの服装で出かけられるような、きちんとした中にもキラリと光るさりげないオシャレを大事にしている。

 上がってきたうちの一点は、カシュクールタイプのワンピースだ。ウエストは高めの位置でキュッと絞られてスタイルがよく見えるし、深く開いた首回りからは鎖骨が覗いて女性らしさが増す。
 季節に合わせてカーディガンやジャケット、スカーフなどを組み合わせられるように案が出て、小物の制作も検討している。

 和風の生地は、いったいどんな服に生まれ変わるだろうか。
 最近はレースやフリルをふんだんに使った洋風をミックスした浴衣も流行っているし、逆に洋服に和のテイストを取り入れてもデザインの幅も大きく広がりそうだ。

 想像を膨らませながらいくつかの会社に連絡を入れて、サンプルを送ってもらう手配をした。

 新ブランドの準備は多少遅れているところもあるが、進捗状況はおおむね順調だ。
 プレスリリースの時期は刻々と迫っている。
 上手くいくのか不安もあるけれど、今は期待感の方が大きい。絶対に成功させてみせる。そんな強い心意気で、全力で取り組んでいる。

 仕事が一段落ついた頃には、和也さんとのんびりできたらいいなと思う。
 そのためにも、彼が戻ったら自分の気持ちを素直に伝えたい。
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