だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
 ようやくやってきた金曜日の今夜は、定時で職場を後にした。

 週が明ければ和也さんが帰ってくる。そう思うとなんだか少しでも早く帰宅したくなり、駅へ向かう足取りも心なしか軽くなった。

 週末のうちに買い出しに行って、疲れているだろう彼を手料理で労わりたい。
 なにを用意したら和也さんは喜んでくれるか。ううん。なにを出しても、私が作ったものなら彼は心底うれしそうな顔を見せてくれると知っている。それを想像しただけで、無意識に表情が緩んだ。

 自宅の最寄り駅で電車を降りる。改札をくぐりながら、週末にやっておくべきことを考えた。

 まずは平日はやりきれていない細部まで掃除をして、リネン類もすべて取り替えておこう。
 長く家を離れていた和也さんが少しでも快適に過ごせるように、できる限りを尽くしたい。

 話をするのは、彼がひとまず休んだ後でかまわない。よいことばかりではなく、お母様の話題も出さなければと思うと多少気は重くなる。でも、それもふたりにとっては避けて通れないものだ。

 自宅について、リビングの端に鞄を降ろしたところで玄関のチャイムが鳴る。
 なにかを頼んだ覚えはないけれど、宅急便だろうかと首を捻りながらモニターを覗いた。

「……お母様」

 画面に映るその姿に、さっきまで浮かれていた気分が一気にしぼんでいく。

 彼女との約束などなにもない。緊急な用なら電話をかけてくるだろう。こんな時間にわざわざ自宅までやってきたのは、きっとよくない話をされるのだろう。

 先日の、兄のレストランの件か。それとも、息子夫婦の生活をチェックしたいのだろうか。
 すでに来てしまっているのだから、ここで居留守を使うのは得策ではないだろう。いないふりをしたところで、私に会えるまでこの場を動かない可能性もある。
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