だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
「和也さんがかわいそうだわ。毎晩遅くまで働いているのに、せっかく結婚しても労わってもらえないなんて」
「本当よね」
「私だったら、家の管理くらいきちんとできるのに。もちろん、和也さんを癒すことも。だって、ずっと彼のそばにいたんだもの。和也さんがなにを求めているのか、言葉にしなくても意思の疎通はできているわ」

 横宮さんに、勝ち誇ったような笑みを向けられる。いかに自分は和也さんと親密な仲にあるのかと仄めかしてくるが、そんな言葉にはもう揺るがない。

 彼ははっきりと、横宮さんとの関係を否定している。
 それに、和也さんは私を愛していると言ってくれた。こちらから離婚を突きつけたというのに、彼はなんとしても私の信頼を取り戻したいと寄り添ってくれる。
 だから、彼女の言葉など気にする必要はない。

 ただ、ここで私がなにかを言い返せば相手を煽ってしまいかねない。私への当たりはますます強くなるだけだ。早く帰ってもらうためにも、勝手に言わせておけばいい。

 ふたりの言い分には、否定も肯定もしない。理不尽に責められている怒りは、手を握りしめることで耐え続けた。
 元から、このふたりにはよく思われていないのだろうとわかっていた。今夜は私を貶めるためだけに会いに来たのだろうか。

「紗季さん」

 今度はなにを言われるのかと、お母様に視線を向ける。

「ラ・パレット・デ・サヴ―ルは、たしかに素晴らしいお店よ」

 兄の懸念は当たっていたようだ。お母様は、やっぱりこの件も根に持っていたらしい。
 言葉では素晴らしいと褒めてはいるが、お母様な顔には明らかな不満が見て取れる。

 なにを言われても揺るがないと自身に言い聞かせながら、彼女の次の言葉に備えた。
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