だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
「ですけど、あの経営者では残念ながらラ・パレット・デ・サヴ―ルは今以上には発展しないでしょうね。あなたのお兄様ったら、お若いわりに頭が固いんですもの」
「あのレストランは……」

 思わず声を荒らげそうになり、必死にこらえる。

「あのお店は、兄が一から築き上げてきたものです。兄の手腕があったからこそ、今のラ・パレット・デ・サヴ―ルがあるんです」

 私のことはいくら言われようともかまわない。
 でも、さすがに兄を貶められるいわれはない。我慢ができず、それでも冷静に言い返した。

「独りよがりになっているんじゃないかしら」

 お母様が不快そうに眉を寄せる。

 たとえ彼女がどう思っていようと、こんな言い分を受け入れるわけにはいかない。

「もちろん兄は、お客様の意見のひとつ一つに耳をかたむけています。ですが、それをどうお店に反映するかは兄やスタッフが話し合って決めています。決して独断ですべてを決定しているわけではないですし、当然聞き入れられないものもあります」

 怒りで握りしめた手が小さく震える。

 お店側の落ち度を指摘されたらなら、兄はすぐさま改善に動くだろう。
 けれど、経営にまで口をだされて従うわけがない。
 しかもお母様は、兄のお店とはなんのかかわりもないのだ。ただ経営者の妹が、自身の息子と結婚したという関係でしかない。

「そんな言い方、失礼だわ。おば様は、お店のことを思っておっしゃってくださっているのに。あなたの今の言動を和也さんが知ったら、彼はどう思うかしら」

 そう言った横宮さんの隣で、お母様がうなずいた。
 暗に和也さんも自分たちに賛同するはずだと仄めかされて、悔しさに唇を噛む。
< 114 / 141 >

この作品をシェア

pagetop