だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
 言葉の端々から、お母様が横宮さんを娘のようにかわいがっていることが伝わってくる。
 勝手に彼女との縁談を進めようとしていたくらいだ。和也さんにはどうしても横宮さんと結婚してほしいといのが、お母様の本音なのだろう。

「莉緒ちゃんの家はね、百貨店を経営する会社でしょ? これまで桐島とはライバルとしてやってきたけど、それよりも協力体制を築いた方が絶対にいいと思うのよ」

 お母様が、会社のことについてどこまで理解されているのかわからない。
 私も桐島グループの事業にはまったくノータッチでいるため、彼女の言い分が正しいのか、そしてお父様の意向でもあるのかを判断できなかった。

「ふたりが結婚して会社同士が提携を結べば、百貨店は統合されて国内どころか世界と戦える規模になるわ。海外の都市にもどんどん進出して」

 お母様が夢物語のように語るのを、横宮さんもうなずいて聞いている。
 横宮さんについて詳しいことは知らないが、日ごろからお母様と頻繁に顔を合わせているようだし、彼女自身は会社に携わっていないかもしれない。

「それに、横宮はお互いにメリットのある事業を提案してくれる約束になっているのよ。ほら、あちらのお店はもともと宝飾店から出発しているでしょ?」

 そう尋ねたお母様に、横宮さんがうなずいた。
 提案を〝してくれた〟ではなく、〝してくれる約束になっている〟という言い回しに、この話がふたりの理想論にすぎない気がした。

「ええ、そうです。うちのスタートは、一軒の宝飾店でした。人気が出てきた頃に、それじゃあこのアクセサリーに合う装いを。そんな人が暮らすのにふさわしいインテリアをって、手を広げていった結果が百貨店になったと聞いています」

「今回の提携を機にね、ニューヨークで話題の宝飾デザイナーとか、イタリアの有名な家具デザイナーとか、横宮の伝手を使って呼び寄せられるかもしれないの。統合して会社の規模が大きくなれば、その存在を無視はできなくなるでしょうから」

 お母様が、自身の指にはめた大粒のサファイアの指輪をうっとりと見つめる。

 どこまでが本当で、本気なのかわからない。
 ただ彼女は会社の利益を考えているのではなく、自身の願望を語っているのは理解した。有名なデザイナーを連れてきたいというよりも、その商品がほしいのだとちょっとした仕草から感じる。
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