だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
「ところで、母さんたちはなぜここにいるんだ?」

 私に向けたものとは違う、低く冷たい口調で彼が問いかける。
 和也さんの静かな怒りを感じて、ぶるっと体が震える。すると彼は、大丈夫だというように背中をなでてくれた。

「俺は呼んでいないし、紗季の立場では来てしまったものは追い返せない。つまり、強引に入ってきたな」
「か、和也! なにを言ってるのよ。紗季さんが入れてくれたに決まっているでしょ」
「そうです。私たちのことは、紗季さんが招待してくれたんです」

 お母様の言葉に、横宮さんも続く。
 私から進んでそんなことはしていないと、彼の腕の中で首を横に振った。

「俺は紗季を信じる」

 上から穏やかな声が降ってきてほっとする。

「それに、横宮莉緒」

 ハッとして体を離し、和也さんを見つめる。
 彼はその声音通りの厳しい視線を彼女たちに向けていた。

「そんな、他人行儀な……いつもみたいに名前で呼んでよ」
「俺は妹だと思っていたからこそ、君を名前で呼んでいたんだ。だがそのせいでなにかを勘違いさせていたのなら、あらためさせてもらう。それに、紗季に不快な思いをさせたくないからな」

 私の顔を覗き込んだ和也さんが、にっこりと笑う。

 それから彼は、再び厳しい視線をふたりへ戻した。

「さすがにここまでされたら、もう君との縁は切らせてもらう」
「そんなっ」

 状況を見届けようと、そっと体を起こす。けれど彼のワイシャツを掴んだ手は離せなかった。

 和也さんの表情に、無理は見られない。私への気遣いではなく、彼の意思でそうするのならなにも言うことはない。
< 121 / 141 >

この作品をシェア

pagetop