だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
 しばらくして私が落ち着くと、和也さんが体を離した。それから私の顔に手を添えて、上向きにさせる。
 そっと瞼を閉じると、すぐにふたりの唇が重なった。

 お互いの存在を確かめ合うように、何度も繰り返しキスをする。口づけは次第に深くなっていき、彼の熱い舌が口内へ侵入してきた。
 和也さんの腕にしがみつきながら、必死に舌を絡ませる。唾液が頬を伝うのも気にならず、ただひたすら貪るように口づけを続けた。
 舌を吸われて、全身がゾクゾクする。わずかに体をのけ反らせると、彼が宥めるように背中をなでてくれた。

 ようやく解放されて、どちらのものともわからない唾液を飲み下す。

 呼吸はすっかり乱れている。
 でも、まだ足りない。彼にもっと近づきたい。もどかしい気持ちを伝えるように、潤んだ瞳で和也さんを見つめる。
彼の方も同じ気持ちなのか、熱い視線で私を捉えてくる。

 唇を指でそっとなぞられる。
 久しぶりの合図に、羞恥と期待で胸が震えた。

「私、ずっと不安だった」

 体を重ねる前に、ちゃんと伝えておきたい。

「あなたに裏切られたって勘違いして。離婚を切りだしたのに、和也さんは見放さずずっと寄り添ってくれた。疑わしいことなんてなにもなかったどころか、あなたは自分の時間を犠牲にしてまで常に私を優先してくれて」

「犠牲にしたつもりはない」

 そこだけは譲らないと、彼が否定する。

「自分が間違っていたんだって、気づいたの」
「悪いのは、俺の方だ。仕事の邪魔になりたくないからと、余裕ぶって紗季に触れるのも我慢して。そういう本音を、もっと話していればよかったんだ」

 私にも問題はあったのだと、首を左右に振る。

「私だって仕事ばかりで、家事すらちゃんとこなせなくて。それで愛想をつかされたらって不安になるのに、会社は辞めたくなくて」

「俺は仕事に一生懸命な紗季を好きになったんだ。だから、そんなふうに思う必要はない」

 お母様たちの言葉を気にする必要はないとわかっていても、どうしても引っかかっていた。
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