だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
 今夜は自分から拒否しておきながら、逆にもっと愛されている証がほしいとも望んでしまう。

 お互いの息遣いが静かに響く中、真実を暴くように目を凝らして天井の模様を見つめる。
 けれど心許ない灯りの下では、横になる前に目にしたはずの中央に描かれていた入り組んだ花模様はよく見えなかった。

 正体のわからない不安に襲われて、心細さに体を縮こませる。
 和也さんはすでに眠っているようだが、私が小さく身じろいだら抱きしめる腕に力がこもった。

 このまま、流されてしまっていいのか。
 なにも知らないふりをしていれば、ふたりの関係は変わらず続いていくのかもしれない。

 お互いの家柄を考慮して、今日の結婚式は少々大掛かりなものになった。
 あれほどたくさんの人を招いておいて、すぐに夫婦仲が拗れたなんて言えない。そんなの和也さんにとっても恥でしかなく、社会的な立場が危うくなりかねないだろう。

 和也さんが本心を隠して私に近づいたのが事実だとしても、これまでの彼は私を大切にしてくれた。仕事で悩みがあれば根気強く話を聞いてくれたし、今日の結婚式だって多忙なのにできる限り時間を捻出して、一緒にプランナーのもとへ何度も足を運んだ。

 ふたりの間には、そうやって積み重ねてきた時間がある。だから和也さんを困らせたいとは思わないし、急に彼を嫌いになるものでもない。

 なによりも大事なのは当人同士の気持ちで、和也さんに尋ねればいいだけの話だ。

 それなのに、愛情はないと言われるのが怖くて動きだす勇気が持てそうにない。
 真実はどこにあるのか。和也さんが私に見せているのは、偽りの気持ちではないのか。

 数時間前の私は、これまで生きてきた二十七年の中で間違いなく一番幸せだった。
 それが今では、すっかり自信を無くしてしまっている。

 私たちは、これからどうなっていくのだろう。
 答えが出せないまま、いつの間にか私も眠りについていた。



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