だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
「その、なんだ。両親に代わって、俺が桐島家側にメリットを示そうと思ったんだよ。自分で言うのもなんだけど、このレストランは世間的にそれなりの評価を受けている。その店と事業提携を結ぶとなったら、嫁ぎ先で妹が肩身の狭い思いをせずに済むと思って」

 驚きに瞬きすら忘れてしまう。
 兄は私が怒っていると勘違いしたのか、早口でさらに続けた。

「お前に和也さんを紹介してもらっただろ? あのときは俺をただの会社員だって紗季は説明していたが、和也さんの方は名前から春野の人間じゃないかって気づいたそうだ。後日こちらから声をかけたときには、願ってもいない話だと喜んでもらえて。逆に打診しようと思っていたところだと言うから、すぐに話し合いを始めたんだ」

 それで、私たちの結婚式のときには二度目の対面とは思えないほど打ち解け合っていたのか。

「当然、こちらが提供するばかりじゃない。うちにもちゃんとメリットがあるかたちで話を進めているから、ありがたいくらいだ」

 チラッと和也さんの方を見ると、その通りだとうなずいて肯定した。

「紗季はあまり実家を当てにしたがらないだろ? こんな話を聞けばいい顔をしないと思って、和也さんにも俺が口止めしていたんだ。しかも、提携の条件に秘密保持を盛り込んでな」

 兄は気まずそうに髪をくしゃりと掴んだ。

「俺としてもせっかくの縁を反故にされるわけにはいかないから、心苦しかったが紗季には明かせなかった」

 和也さんの下には多くの社員がいるのだから、それは当然だ。私に話せなかった理由も納得した。

「俺のせいでふたりの仲をますます拗らせたみたいで、すまなかった」
「……ううん」

 たしかに、私か和也さんに対して疑念を抱くきっかけになっていた。

「兄さんは私を思ってそうしてくれたんだから、謝罪はいらないよ。いろいろ考えてくれて、本当にありがとう。和也さんも、責めちゃってごめんなさい」
「まあ、おかげで俺たちの仲がさらに深まったからよしとしようか」

 まるで兄に見せつけるように、彼が私に甘い笑みを浮かべるから恥ずかしくなる。

「くっ。新婚なんて羨ましすぎるだろ」

 あまりにも悔しそうにする兄に、和也さんと顔を見合わせて笑った。
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