だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
 これで堅苦しい話は終わりだと、兄の表情もようやく緩む。

「そろそろお料理を出してもらう?」

 すっかり話し込んでいたせいで、来店してからそれなりに時間が経ってしまった。お腹もすいたし、急かすように兄に声をかける。

「ああ、そろそろ……おっ、ちょうど来た。美紅、こっちだ」
「え?」

 兄の視線を追うと、そこには妹の姿があった。
 なぜここに彼女が?と疑問に感じる私を見て、美紅はあからさまに顔をしかめた。

「ちょっと、お兄ちゃん!」

 一応、周囲に配慮して声量を抑えているが、美紅は不満しかないと言った様子だ。
 この場に彼女も呼ばれているのは聞いていなかった。こうも嫌そうにされると、いい気はしない。
 美紅は兄の隣に遠慮なく座った。

「まあまあ、落ち着けって。今日は俺の奢りだから」
「だから、すっごく楽しみにして来たんじゃない。なのにお姉ちゃんがいるなんて……まあお義兄さんもいるならいいけど」

 そういえば、美紅は初めて和也さんに合わせたときから『カッコいい』『お姉ちゃんの相手だなんて狡い』と漏らしていた。
 彼女の反応につい顔が引きつりそうになったが、不意に和也さんが隣から肩を抱き寄せてくるから気が逸れる。

「歓迎してもらえて、光栄だなあ。大切な紗季の家族なんだから、たまにはこうしてみんなで顔を合わせられたらと、紘一君に頼んで招待してもらったんだ」
「本当? うれしい」

 パッと笑みを浮かべた美紅だったが、和也さんが私を抱き寄せている事実を思い出してすぐに顔をこわばらせた。
 いかにも友好そうに話している和也さんだが、冷静になって考えると私たちのいちゃつく姿を見せつけているようなものだ。

 なんとなくかみ合わない微妙な空気の中、食事がスタートした。
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