だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
 和也さんの説明に、兄も続く。

「二号店を出せとか、うちと組まないかなんて条件のいい話はこれまでにいくつもあった。でも、どうしても新たに店舗を構えるのは俺の主義に反するから断り続けていたんだ」

 それは私も知っていたし、信念を貫く兄の姿はカッコよく見えていた。

「和也さんとの事業を通して、俺ももう少し柔軟に考えてみようと思えて。そこで、ここのシェフが監修をした冷凍食品の開発を提案した」

 ビュッフェへの提供も、〝ラ・パレット・デ・サヴ―ル監修〟とそのコーナーに明記すると、和也さんが教えてくれる。それを前面に出した企画になっているそうだ。

「もちろん、両社のスタッフが試食をしてクリアしたものだけを提供する。味は間違いない」

 和也さんが断言すると、兄も当然だとうなずいた。

「今後は家庭向けの商品開発を進めているんだ。もちろん、シェフも乗り気でいる」
「いいじゃない! うちの食卓も、お世話になるかも」

 私がそう言えば、和也さんも「いいな」と合わせてくれる。

「俺も紗季も働いているんだから、それくらいの贅沢はしてもいいだろう」

 そんな調子で話が盛り上がっていると、美紅がすっかりむくれていた。

「もう。難しいことばっかり」

 まだ学生の美紅には、たしかに退屈だったかもしれない。

「悪い、美紅。ほら。このタルトタタンを食べてみろ。俺も気に入ってるんだ」

 美紅の目の前に、綺麗にキャラメリゼされたデザートが差し出される。
 妹の機嫌を必死に取る兄に、心の中で「お疲れさま」と声をかけておいた。
< 138 / 141 >

この作品をシェア

pagetop