だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
「ほら、美紅。ふたりはどう見たって相思相愛だ。羨ましいとか狡いとか、もうあまり言うなよ」

 和也さん本人の前ではさすがにあからさまな発言はしないものの、私に対して妹は頻繁にそんなことを言う。もしかしてこの見せつけるようなやりとりは、兄と和也さんによる美紅への注意の意味が込められていたのかもしれない。

 私から彼女の振る舞いについて、愚痴をこぼしたことはなかったはず。
 ただ兄は、実際に何度も美紅の態度を目の当たりにしている。私が本当はかなり不快に感じているのにも、気づいていたのだろう。

 美紅は叱るだけで聞き分ける子ではないし、私からなにかを言えば余計に反発しかねない。それなら、夫婦仲の良さを見せつければいいと考えたのかもしれない。

 そう思って兄を見つめれば、肯定するように目を細めて小さくうなずいていた。間違いなく、和也さんも共犯だ。

 兄の誤算と言えば、和也さんが想像以上に乗り気になっていることだろう。

「私だって、お姉ちゃん以上にいい男を捕まえるんだから!」

 美紅のそんな宣言に、兄が「おお、がんばれ」とそれほど熱のこもらないエールを送る。
 これで私への変な絡みもなくなるのならありがたい。

「それじゃあ、紗季。新婚旅行から帰ってきた時には、また土産話でも聞かせろよ。俺も、将来の参考にするからさ」

 兄の珍しい発言に目を丸くする。
 両親は政略結婚を進めるような感じではないし、最近の兄に親密な相手がいる様子もない。

「ええ⁉ 兄さん、彼女がいるの?」

 私が知らなかっただけで、結婚を考えるような女性がいたのだろうか。そうなら、絶対に応援する。

「……これからだよ!」

 なんだ、そうかと、急激に興味を失う。
 くそっとジト目で私たちを見る兄を励ましながら、食事を終えて帰途に就いた。




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