だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
* * *

「子どもをどうしようかって、主人と話しているんですけど」

 昼の休憩になり、五人の同僚と連れ立って会社の近くのファミレスに来ている。
 オーダーを済ませたところで、結婚して一年ほどが経つ女性が皆の考えを聞きたいと打ち明けた。

「悩むところよね。仕事を取るか、家庭を取るか」

 それに対して最初に声を発したのは藤堂さんだ。彼女自身も同じような悩みにぶつかって、離婚をして仕事を取ったのだと以前話していた。

「うちも似たような状況だなあ。主人も義両親も、子どもをすごく楽しみにしているんですよね。もちろん私も、いずれはほしいんですけど。でも、今はもうしばらく仕事に専念していたいなって」

 なにげなく出てきた話題だったが、他人ごとに思えなくて耳を凝らす。

「せっかく新ブランドの立ち上げメンバーに入れたんだから、その気持ちもわかるわ。桐島さんのところは、どうするかご主人と話してる?」

 藤堂さんが私に話を振った。

「うちは、子どもはしばらくしてからって決めていて」

 あえて目を逸らしてきたことを聞かれて、内心で焦る。

 たしかに子どもは少し先にしようと話し合っていたが、それを決めたのは彼への信頼が揺らぐ前の話だ。
 和也さんとの間に子どもをもうけていいのだろうか。そんな疑問を、私は結婚式を挙げたあの日から抱いている。
 無責任だという自覚はあるけれど、今は避妊をしているのもあって結論を曖昧なままにしてきた。

 でも、そもそもそんなふうに思いながら彼に抱かれるのはおかしな話だ。和也さんの愛情を確かめたくて求められるまま応じていたが、避妊しているからって百パーセント大丈夫だと言いきれないかもしれない。
 覚悟もないまま万が一子どもができたらと想像して、すごく怖くなった。

「後取りになるわけだから、今後は義両親にいろいろと言われるかもしれないですね」

 隣に座った同僚が眉をひそめながら言う。彼女は、義両親の孫を催促する声が年々大きくなっているのだという。
 ただ旦那様がしっかりとした人で、いつも守ってくれるから大丈夫だと惚気られてしまった。
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