だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
 それからの私は、疲れているのを理由に彼からのベッドの誘いを断る夜が増えていった。

 新しいプロジェクトのメンバーに選ばれていたのは都合がよかった。以前よりも多忙になり、帰宅も遅くなりがちだ。
 彼も実情を知っているから、誘われる機会も減っている。
 そこに一抹の不安を感じる私は、ずいぶん身勝手だ。
 もちろんそんな感情を表に出しはしないけれど、いつだって愛されているという確証がほしくなる。
 それなのに、現状は家のことすらままならない。

 掃除ができない日もあるし、洗濯物も貯めてしまう。夕食が手抜きになってしまったり、時にはお惣菜を買って帰ったりする日もある。
 共働きとはいえ、疲れて帰宅してそんな状態なら苛立ってもおかしくないのに、和也さんは文句のひとつも言わない。

『お互いに仕事をしているんだ。できる方がやればいいし、楽をしてもいい』

 彼自身も家事を率先して請け負ってくれるし、先日は予定がキャンセルになって早く帰ったからと、和也さんが夕食を作って待っていてくれた。

 彼だって多忙の身で疲れているだろうに、迷惑そうな顔など一度も見せない。私を思いやる姿は以前から変わらず、仕事のために結婚したとは感じられなかった。

 愛情の確認は、体を重ねるだけじゃない。日常の些細な中にも、私に対する彼の想いはあふれている。それは交際している頃から感じていたことだった。

 でも、ふっと考えてしまった。

 これは気遣いなのではなく、関心が薄いだけなのかもしれないと。

 私との仲を程よく保つために、ある程度のことは目をつむっていればいい。優しくするのだって、仕事のためにこの関係をつなぎとめたいからだったとしたら?

 彼の振る舞いを捻くれて捉え、疑いの目を向けそうになる。
 そして、そんな自分に自己嫌悪に陥る。

「ちゃんと、話をしないと」

 中途半端なままではいけない。結婚式以来ひと月の間悩み続けて、話し合いをしようとようやく心を決められた。
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