だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
 翌日は、この時期らしく雨が降っていた。

 今朝の私は、いよいよ彼に真意を尋ねるのだと緊張をしていた。それと同時に、久しぶりに和也さんと食事に出かけるという高揚感で自分でもよくわからない心境になっている。

 結婚式の日以来、彼への信頼が揺らいでいる。それでも和也さんを愛しているという気持ちがなくなっていないのは、積み重ねた時間があるからこそ。

 交際中に彼になにか疑念を抱くようなことはなかったどころか、私は大切にされていると思っていた。彼の優しさは、まったく好意のない相手に対する態度でなかったと感じられる。

 憎からず私を想ってくれているのなら、本人の口から事実を聞いて一緒にいられる可能性を探っていきたい。
 たとえ彼の目的が兄のレストランだったとしても、私への気持ちも伴っているのならそれでいいんじゃないのか。そんなふうに考えていた。

 午後になり、新ブランドの会議の席に着いた。

 新しく立ち上げたブランドは、オフィスカジュアルを提案する。
 ただそれだけではなくて、終業後にデートやショッピングにそのままの服装で出かけたくなるデザインを売り出しのポイントとしていく。
 より女性らしさの増す首回りのカッティングの工夫やレースやフリルを使うなど、こだわりをプラスしたデザインを模索している。

「ブランドのメインデザイナーは奥寺(おくでら)さんに決定しました。このブランドのコンセプトも納得して、私たちの思いに賛同してくれています」

 誰からともなく大きな拍手が起こる。
 彼は候補に挙がった中で最も推していた新進気鋭のデザイナーで、それだけにチーム内の士気が一気に上がった。

「来週には、何点かのデザイン案を提出できるとのことです」
「速いですね」
「さすが奥寺さん。期待大ですね」

 奥寺さんとの連絡の窓口になっている社員の報告に、感心する声があがる。
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