だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
「それじゃあ、今後の予定だけど」

 一通り報告が終わったところで、それまで聞き役に徹していた藤堂さんが話し始めた。

「桐島さんには、予定通り生地の手配をお願いします」
「はい」

 バイヤー時代に知り合った、質の良い生地を扱う業者をいくつか思い浮かべる。コストの関係もあるため、思う素材が手に入れられるかは私の交渉次第になるだろう。

「プレスリリースの際には、奥寺さんにもデザイナーとして前面に出てもらう方向で話が進んでいるわ」

 新ブランドの商品は、まず都内の一部の店舗やポップアップ店で先行販売する。その後は全国の展開すると同時に、ECサイトでの販売にも対応していく予定だ。

 ゼロからスタートしたプロジェクトが、少しずつ形になっていく。目指すべきゴールを描けたことで、チームはますます波に乗っている。

「それじゃあ、よろしく」

 会議を終えて、それぞれの仕事を始める。
 私は早速、奥寺さんの要望に目を通していく。併せて、彼が求める生地を扱っていそうな業者ピックアップしていった。

 時間は飛ぶように過ぎていき、あっという間に十七時半の定時が目前に迫っていた。

「定時十分前です。金曜日なので、そろそろ切り上げましょう」

 同僚の呼びかけにハッとする。それまでやっていた仕事に区切りをつけて、帰宅の準備を始めた。
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