だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
 いつの頃からか、幼馴染の莉緒は俺に明らかな恋情を向けるようになっていた。
 こちらにその気はまったくなく、彼女があきらめられるように突き放し続けている。幼馴染としての付き合いはしても、それ以上の関係には絶対にならないと。
 彼女が紗季と同年齢だとわかってはいる。ただ幼いころから見ていたせいか、どうしても異性としては意識できなかった。

 それに結婚を損得で考えるつもりはないが、横宮家と縁づいても桐島グループにはメリットがない。それどころか、デメリットになりかねない。

 結婚は自由にしていいと言っている父も、さすがに相手が同業者となれば会社としての立場を考えなければならない。
 
 桐島と横宮の経営するデパートは、それぞれの特色を打ち出してライバル店として張り合っている。
 店舗を構えるエリアはほとんど被っているため、統合して新しく出店するというのも考えづらい。採算の取れるエリアは、現状ではそれほどないだろう。

 それに一緒になってしまえば独自のカラーが薄れ、百貨店としての魅力が半減しかねない。それならこのまま、ライバル同士でいた方がお互いにとってもいい。

 父も同意見でいたのだが、両家の妻が仲良くすることに特段問題はなく、あくまでプライベートなものだと放っておいた。

 莉緒に付き纏われるのが煩わしければ、俺自身は横宮家と完全に縁を切っても支障はない。
 そうしなかったのは、友人の娘を気にかけてやってほしいという口うるさい母親にうんざりさせられていたからだ。加えて、莉緒が俺によく懐いていたのもある。

 適度に莉緒の相手をしていれば、ふたりともが満足する。そんな打算で続いていた関係だった。
 彼女から異性として見られているのを感じるようになってからは、勘違いさせないように配慮をしていた。
 だが幼い頃から付き合いがあるせいで莉緒には遠慮がなく、会社にまで押しかけてくることもある。それについては迷惑だとはっきり伝えたが、彼女は明らかに不満そうな顔をしていた。
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