だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
「でも、彼女との縁談が持ち上がっていたんでしょ?」
当事者である俺ですら忘れかけていたどうでもいい情報を紗季に吹き込んだのは誰だと、舌打ちしたくなる。
「何年か前に、そんな話も上がっていた」
「それなら」
「母に呼び出されて行ってみれば、だまし討ちのように見合いの席が用意されていた。俺にそんな気はさらさらなかったから、二度とこんな真似をするなとお互いの母親のいる場できっぱり断っている。父ですら、承知していない話だ」
「え?」
彼女の言葉を遮るように説明したところ、戸惑いの表情を浮かべた。
「確かに、莉緒が俺を慕っているのはわかっている。それが兄に向ける以上のものだとも。けれど、俺にはどうしてもそんなふうには見られなかった。これまでに彼女を恋愛対象として見たことは一度もないし、当然交際をしていた事実もない。もちろん気を持たせるような振る舞いはしていないし、本人には繰り返し無理だと伝えている」
少しの疑念も抱かせないよう、重ねて否定する。莉緒に対して少々辛らつな物言いに聞こえたかもしれないが、そんなものはどうでもよかった。
俺が愛しているのは紗季だけだ。ほかの女性など視界にも入らないのだから。
「嫌な思いをさせて、悪かった。莉緒とは長い付き合いになる。俺が子どもの頃から、ことあるごとに彼女の母親に『莉緒をよろしく』と言われ続けてきたんだ。それがどういう意味か、真意は今でもわからない。ただお互いほかにきょうだいがいないのもあって、俺は兄として彼女に目をかけてきた」
彼女がまだ学生の頃に、食事に連れて行ってほしいとしつこくされて二度ほど応じた。
二十歳の誕生日に俺の母親とともに顔を合わせており、ねだられたバッグをお祝いの意味も込めて贈った。もちろん常識の範囲内の値段のもので、そもそも俺が二十歳になったときに向こうの母親から祝いを贈られたお返しでもあった。
母の強引さに渋々応じた面もあるが、それはすべて兄の立場でしてきたと、紗季に包み隠さず明かした。
当事者である俺ですら忘れかけていたどうでもいい情報を紗季に吹き込んだのは誰だと、舌打ちしたくなる。
「何年か前に、そんな話も上がっていた」
「それなら」
「母に呼び出されて行ってみれば、だまし討ちのように見合いの席が用意されていた。俺にそんな気はさらさらなかったから、二度とこんな真似をするなとお互いの母親のいる場できっぱり断っている。父ですら、承知していない話だ」
「え?」
彼女の言葉を遮るように説明したところ、戸惑いの表情を浮かべた。
「確かに、莉緒が俺を慕っているのはわかっている。それが兄に向ける以上のものだとも。けれど、俺にはどうしてもそんなふうには見られなかった。これまでに彼女を恋愛対象として見たことは一度もないし、当然交際をしていた事実もない。もちろん気を持たせるような振る舞いはしていないし、本人には繰り返し無理だと伝えている」
少しの疑念も抱かせないよう、重ねて否定する。莉緒に対して少々辛らつな物言いに聞こえたかもしれないが、そんなものはどうでもよかった。
俺が愛しているのは紗季だけだ。ほかの女性など視界にも入らないのだから。
「嫌な思いをさせて、悪かった。莉緒とは長い付き合いになる。俺が子どもの頃から、ことあるごとに彼女の母親に『莉緒をよろしく』と言われ続けてきたんだ。それがどういう意味か、真意は今でもわからない。ただお互いほかにきょうだいがいないのもあって、俺は兄として彼女に目をかけてきた」
彼女がまだ学生の頃に、食事に連れて行ってほしいとしつこくされて二度ほど応じた。
二十歳の誕生日に俺の母親とともに顔を合わせており、ねだられたバッグをお祝いの意味も込めて贈った。もちろん常識の範囲内の値段のもので、そもそも俺が二十歳になったときに向こうの母親から祝いを贈られたお返しでもあった。
母の強引さに渋々応じた面もあるが、それはすべて兄の立場でしてきたと、紗季に包み隠さず明かした。