だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
「今にして思えば、俺のそういう態度が彼女をつけ上がらせていたのだと反省している。もちろん、紗季と出会ってからは一度もない」
本当に?と問うように見つめる彼女の視線を、まっすぐに見返す。
さすがに紗季に勘違いされたくなくて、莉緒が俺に近づかないように徹底的に配慮していた。母はうるさかったが、あの人は春野との縁を望んでいたのもありそれなりに従っていた。
「名前で呼ぶのがすっかり癖づいていたが、紗季にとってはそれも不快だったよな。配慮が足りなくてすまない。今度からはあらためる」
「それは……ううん。私が口を挟むようなことじゃないから、和也さんのしたいようにすればいいと思う」
それは嫌だと、はっきりと言ってほしい。
許すような口ぶりをだが、彼女の眉がわずかに下がる。本音では受け入れがたいのだ。
もっと気を使うべきだった。紗季にそんな顔をさせてしまった自分が情けない。
「とにかく、俺にやましいところはなにもない。紗季を愛しているのだから当然だ。離婚する気なんてさらさらない」
「でも……」
離婚を切り出したからには、彼女だって相当な覚悟をしていたはずだ。
向上心が高く行動力のある紗季なら、もしかしてその後についても考え始めていたかもしれない。再びひとり暮らしに戻って、仕事に没頭する未来を。
俺を信じていいのか逡巡する紗季の様子を見ていて、そうかと納得した。
「どうやら、俺の愛が紗季には十分に伝わっていなかったようだ。すべてが俺の力不足だ」
「え?」
莉緒をはじめとした紗季に勘違いをさせる話をした人物に対する怒りから、無意識にいつもより低い声になる。もちろん、不甲斐ない自分に対する憤りもあった。
彼女の気持ちがわずかでもまだ俺にあるのなら、なおさら手放せるはずがない。
「俺が未熟だから、紗季に疑念を抱かせる事態になってしまったんだな」
「そ、そうじゃないから」
莉緒の件はともかく、彼女の兄との関係は明かさない約束になっている。それにいくら俺がここで説明しても、頑なになっている紗季には正確には届かないだろう。一度拒絶されてしまえば、再び耳を傾けてもらうのはますます難しくなる。
それならば、俺がしっかり愛情を伝えきれていなかったがために起きたすれ違いだと今はすり替えておく。いや、それも確かな原因のひとつだ。
本当に?と問うように見つめる彼女の視線を、まっすぐに見返す。
さすがに紗季に勘違いされたくなくて、莉緒が俺に近づかないように徹底的に配慮していた。母はうるさかったが、あの人は春野との縁を望んでいたのもありそれなりに従っていた。
「名前で呼ぶのがすっかり癖づいていたが、紗季にとってはそれも不快だったよな。配慮が足りなくてすまない。今度からはあらためる」
「それは……ううん。私が口を挟むようなことじゃないから、和也さんのしたいようにすればいいと思う」
それは嫌だと、はっきりと言ってほしい。
許すような口ぶりをだが、彼女の眉がわずかに下がる。本音では受け入れがたいのだ。
もっと気を使うべきだった。紗季にそんな顔をさせてしまった自分が情けない。
「とにかく、俺にやましいところはなにもない。紗季を愛しているのだから当然だ。離婚する気なんてさらさらない」
「でも……」
離婚を切り出したからには、彼女だって相当な覚悟をしていたはずだ。
向上心が高く行動力のある紗季なら、もしかしてその後についても考え始めていたかもしれない。再びひとり暮らしに戻って、仕事に没頭する未来を。
俺を信じていいのか逡巡する紗季の様子を見ていて、そうかと納得した。
「どうやら、俺の愛が紗季には十分に伝わっていなかったようだ。すべてが俺の力不足だ」
「え?」
莉緒をはじめとした紗季に勘違いをさせる話をした人物に対する怒りから、無意識にいつもより低い声になる。もちろん、不甲斐ない自分に対する憤りもあった。
彼女の気持ちがわずかでもまだ俺にあるのなら、なおさら手放せるはずがない。
「俺が未熟だから、紗季に疑念を抱かせる事態になってしまったんだな」
「そ、そうじゃないから」
莉緒の件はともかく、彼女の兄との関係は明かさない約束になっている。それにいくら俺がここで説明しても、頑なになっている紗季には正確には届かないだろう。一度拒絶されてしまえば、再び耳を傾けてもらうのはますます難しくなる。
それならば、俺がしっかり愛情を伝えきれていなかったがために起きたすれ違いだと今はすり替えておく。いや、それも確かな原因のひとつだ。