だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
 ふと気づけば、定時で上がったときはまだ空は明るかったがすっかり暗くなっている。どうやら一時間以上ここで過ごしていたらしい。

「長く引き留めてしまって、ごめんなさい。桐島さんと話しているのが楽しくて」
「俺も、楽しませてもらった。ああ、そうだ」

 そう言いながら、彼はスマホを取り出した。

「さっきの件で、向こうの会社が君に話を聞きたがるかもしれない。念のため、連絡先を教えてくれないか」

 桐島さんにすっかり気を許していた私は、迷うことなく応じた。

「今日はありがとうございました」

 ひとりで大丈夫かと心配してくれる彼に、もう平気だと返す。

「それじゃあ、気をつけて」

 桐島さんはわざわざ私を駅まで送り、颯爽とその場を後にした。






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