だって結婚に愛はなかったと聞いたので！～離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?～

　開店からしばらくした頃、世界の優れたレストランを紹介する雑誌で兄のお店が紹介された。その雑誌は諸外国でも出版されているものだったため、ラ・パレット・デ・サヴ―ルは今や世界中の食通に知られるまでになっている。

　お店の評判は上々で、国内外の有名人がお忍びで訪れることもあるという。予約が半年以上先まで埋まっているのだと、少し前に兄が誇らしげに教えてくれた。

　身内びいきもあるが、あれほどのお店なのだからオーナーと縁づいたことをメリットに捉える人もいると理解している。

　それよりも、横宮家の縁談を断わったとはいったいどういうことだろうか。

　桐島家には、子どもが和也さんしかいない。だから、間違いなく彼に関する話のはず。
　けれど私と交際している間に、彼に縁談が持ち上がっていたなど一度も聞いていない。
　和也さんをはじめ、周囲が隠していたのか。それとも、私たちが知り合う以前の出来事なのか。

　夫となった人に持ちかけられていた縁談となれば、どうしても気になってしまう。けれど、私の立場では聞かなかったふりをするのが正しいだろう。

　複雑な気持ちが顔に出ないように意識しながら、声をかけてくれた人との記念撮影に応じる。顔が引きつりそうになりながらも、なんとか笑顔を浮かべ続けた。