だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
 考え込む桐島さんにかまわず、誤解を解こうとさらに続ける。

「そう。兄の紘一です。以前から、よくあることなんです」

 事実を知った彼が、今度は安堵したようなため息をつき私をまっすぐに見つめてきた。

「よかった」

 なにが?と尋ね返すのは、なんとなく憚られる。
 それよりも、この状況はもしかしてと鼓動が速くなった。

「君には交際相手がいるのかと、勘違いした。変な聞き方をして悪かった」
「う、ううん。大丈夫だから」

「紗季さん」

 あらたまった様子の彼につられて、背筋が伸びる。
 にわかに熱を帯びた桐島さんの視線からは、逃れられそうになかった。

「紗季さんのことが好きなんだ。結婚を前提に、俺と付き合ってくれないか」

 思わず悲鳴を上げそうになって、口もとを押さえる。

 何度も食事に誘ってくれるくらいだから、私を好意的に見てくれているとは感じていた。
 ただ彼に選ばれる自信なんてなくて、てっきり異性の友人枠のひとりなのだと考えていた。
 それがまさか、〝結婚を前提に〟とまで言われるなんて信じられない。
 
驚きと歓喜に胸が震える。私も彼を好きなのだから、答えは決まっていた。

「よろしく、お願いします」

 こうして私たちは、交際をスタートさせた。
 その日から、私は彼のことを〝和也さん〟と呼ぶようにした。彼の方も〝紗季〟と、より親密な呼び方に変えた。
 会うたびに彼に惹かれていき、ふたりの距離はどんどん近づいていく。
 
 半年ほどして彼からプロポーズを受けたときは、飛び上がりそうになるほどうれしかった。
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