だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
 どうやら好意的に捉えられたようだと、密かに安堵する。

「春野というと、あのラ・パレット・デ・サヴ―ルの?」
「え、ええ。兄が経営しているレストランです」

 私が頼んだために、兄もまた和也さんになにも話していない。これまで隠してきたことに、彼に悪印象を与えていないかと心配になる。

「紗季の実家がなんであろうと関係ないだろ。俺は彼女を愛しているから結婚したいんだ」

 和也さんが、私の手をギュッと握った。
 実家について黙っていたことを不快に思われてはいない。そう感じられて、ようやく私は彼へ視線を向けた。

 私と目が合うと、和也さんは大丈夫だというように頷いてくれた。それに安堵して微笑み返したが、ずいぶんぎこちなかったかもしれない。

「あなたはそう言うけれど、周囲は違うわ。どこの家と縁づいたかは重要。けれど……そう。春野のお嬢さんなのね」

 お母様の物言いから、損得勘定をしていることがうかがえた。

 瞬時に気色ばんだ和也さんを、大丈夫だからと視線で伝えながら宥める。理由はどうであれ、認めてもらえる可能性があるのならかまわなかった。

「わかったわ。あなたたちの結婚を認めましょう。ほかの縁談は、私の方でお断りしておきますから」

 お母様の言葉に不満をあらわにする和也さんの隣で、私は胸をなでおろしていた。





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