だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
リビングへ行くと、ちょうど和也さんがグラスをテーブルに置いたところだった。
「ほら、そこに座って」
ソファーの定位置に私が座ると、ひとり分間を空けて彼も腰を下ろした。これが交際時からの私たちの距離感だ。
甘い雰囲気になると、彼はぐっと距離を詰めてくる。それに対して私は、気恥ずかしさに少しだけ離れる。
でも、嫌なわけじゃない。それをわかっている和也さんは、くすりと笑いながら私を抱き寄せるのがいつものことで……って、そんな想像をしている場合じゃない。緊張をごまかしたくて、つい考えが逸れてしまった。
グラスを手に取り、コーヒーを飲む。
「美味しい」
酸味もフルーティーさもない、少し苦みが強い深煎りは私好みど真ん中だ。
「だろ? 絶対に紗季が好きな系統だと思ったんだ。買ってよかったよ」
コーヒーの好みを話題にしたのは、出会った当初だったと思う。まだ交際などしていない、友人関係の頃だ。
そんな話題は、後にも先にもあの時だけだったはず。
些細な話をちゃんと覚えてくれていたのかと、うれしさに口もとが緩む。ついでに、緊張も少しずつ解れていった。
「ありがとう」
素直にお礼を伝えた私に、和也さんは穏やかな笑みを返してくれた。
「紗季。昨日は、無理して出勤していただろう」
美味しいコーヒーにすっかり油断していたところで、和也さんに図星を指されてうろたえる。思わず視線を泳がせ、そっとグラスをテーブルに戻した。
「寝室を一緒にするのは譲れないが、紗季には好きなように過ごしてほしい。俺がいない方がリラックスできると言うなら家を空けるし、ほかに要望があるならなんでも受け入れるつもりだ」
「ちょ、ちょっと待って。私、和也さんにそこまで望んでいないから」
たしかに私は彼を疑っている。
そして、三カ月の猶予を受け入れると決めたのも私自身だ。
甘すぎる態度にどうしていいのかわからず、昨日はつい逃げ出してしまった。ただそれは私の勝手な行動で、和也さんにどこかへ行ってほしいなん思わない。
「ほら、そこに座って」
ソファーの定位置に私が座ると、ひとり分間を空けて彼も腰を下ろした。これが交際時からの私たちの距離感だ。
甘い雰囲気になると、彼はぐっと距離を詰めてくる。それに対して私は、気恥ずかしさに少しだけ離れる。
でも、嫌なわけじゃない。それをわかっている和也さんは、くすりと笑いながら私を抱き寄せるのがいつものことで……って、そんな想像をしている場合じゃない。緊張をごまかしたくて、つい考えが逸れてしまった。
グラスを手に取り、コーヒーを飲む。
「美味しい」
酸味もフルーティーさもない、少し苦みが強い深煎りは私好みど真ん中だ。
「だろ? 絶対に紗季が好きな系統だと思ったんだ。買ってよかったよ」
コーヒーの好みを話題にしたのは、出会った当初だったと思う。まだ交際などしていない、友人関係の頃だ。
そんな話題は、後にも先にもあの時だけだったはず。
些細な話をちゃんと覚えてくれていたのかと、うれしさに口もとが緩む。ついでに、緊張も少しずつ解れていった。
「ありがとう」
素直にお礼を伝えた私に、和也さんは穏やかな笑みを返してくれた。
「紗季。昨日は、無理して出勤していただろう」
美味しいコーヒーにすっかり油断していたところで、和也さんに図星を指されてうろたえる。思わず視線を泳がせ、そっとグラスをテーブルに戻した。
「寝室を一緒にするのは譲れないが、紗季には好きなように過ごしてほしい。俺がいない方がリラックスできると言うなら家を空けるし、ほかに要望があるならなんでも受け入れるつもりだ」
「ちょ、ちょっと待って。私、和也さんにそこまで望んでいないから」
たしかに私は彼を疑っている。
そして、三カ月の猶予を受け入れると決めたのも私自身だ。
甘すぎる態度にどうしていいのかわからず、昨日はつい逃げ出してしまった。ただそれは私の勝手な行動で、和也さんにどこかへ行ってほしいなん思わない。