だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
「私が昨日から避けていたのは認める。でもそれは和也さんが嫌だからとかじゃなくて、その、どう接していいのか困っているというか……」
「紗季は、俺が近くにいても嫌じゃないんだな?」
「え、ええ」

 彼に対する嫌悪感なんかはまったくない。

 一生を左右する問題なのだから、和也さんとどんな関係を築いていくのか、きちんと見極めなければいけない。そのためには、ちゃんと向き合うべきなのもわかっている。

「そうか。それなら」

 私の返答に顔を綻ばせた和也さんは、それからふっと真剣な目をした。

「俺から逃げないでほしい」

 静かな室内に、溶け始めた氷がカラリと音を立てる。

 彼のまっすぐな視線に、鼓動が速くなっていく。視線を逸らせないまま、ゴクリと喉を鳴らした。

「……わかった」

 この胸の高鳴りは決してときめいたとかではない。
 私も彼に誠実でいなければならないと。ようやくそう覚悟を決められた。







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