だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
 一週間の仕事を終えた金曜日。私より少し遅く帰宅した和也さんが、尋ねてきた。

「パスポートは大丈夫か?」
「う、うん」

 先週末に予定を聞かれた際、なぜか彼からパスポートを用意しておくように言われたけれど理由がわからない。前日になった今でも、詳細は明かしてもらえていないでいる。
 こちらから尋ねても、和也さんからは「当日のお楽しみだ」と同じ答えしか返ってこない。

 週明けからいつも通り仕事があるのは彼も承知している。それは和也さんだって同じだ。
彼は無責任なことをする人ではないから、仕事に支障のない予定に違いないと信じている。

 翌日になり、言われていた通り動きやすいカジュアルな服装に着替える。
 家を出て連れて行かれたのは、羽田空港だった。パスポートと言われて国外へ行くという予感はあったが、困惑するばかりだ。

「和也さん。いったいどこに行く気なの?」

 そろそろ本当のことを教えてほしい。

「これ以上隠しておくと、紗季が不安になってしまうかな。大丈夫、帰国は明日。そして目的は、紗季を楽しませること」

 そう言いながら、彼が私の手を取った。

「韓国まで、食事に行こうか」

 今なんて言ったと、思考がフリーズする。

 海外へ行くのはパスポートの準備を言われた時点で察していたし、帰国を間に合わせるにはアジア圏だろうとも予想ができていた。

 ただ、出かける目的が〝食事〟って……あまりにも贅沢すぎる!

 その後、彼にはさらに驚かされることになる。

「時間がもったいないだろ」

 そう言いながら案内されたのは、通常とは違うターミナルだ。
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