だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
 韓国へは、お昼少し前に到着した。
 空港内を少し移動したところで、いろいろと手続きがあるため待っているように言われる、壁に背を預けて、大勢の人が行き来する様子をぼんやりと眺めていた。

『どこから来たの?』

 不意に横から声をかけられて、慌てて体を起こす。いつの間にか、ふたりの男性が私の近くまで来ていた。

『観光?』

 韓国語だろうか。英語ならカタコトなりになんとかコミュニケーションを取れるが、それ以外の言葉だと私には難しい。

『ひとり? 今時間は大丈夫?』

 矢継ぎ早に声をかけられて、慌ててしまう。

「え? あの……」

 どうしよう? なにを言われているのか、まったくわからない。

『日本人かな? よかったら、俺たちが案内するよ』
『そうそう。この辺りには詳しいから、任せてよ』

「い、いえ、あの……」

 どうしよう。日本語すらまともに出てこない。

 戸惑っている間に、ぐいぐい距離を詰められていく。

 なんとなくナンパだろうと感じたが、あまりにも強引な雰囲気に腰が引けてしまった。半ば若干パニックになりかける。

『ね、行こうよ』

 私の方へ無遠慮に腕を伸ばしてくるのを見て、わずかに横にずれた。

「困ります」

 言葉が通じないかもしれないが、なんとか拒否する。それでも、相手に引く様子はない。
元カレに強引に腕を引かれた記憶がよみがえり、体が竦む。恐怖に襲われて、抵抗らしい抵抗ができなくなっていく。

 ただひたすら首を左右に振っていたその時。背後からぐっと腕を引かれて、背中がとんっとなにかにぶつかった。同時に、全身を覆い隠すようにして抱きしめられる。
 ギクリと体が強張ったのは一瞬で、すっかり慣れ親しんだ温もりに気づいて安堵する。
 確認しなくても、それが和也さんだとわかった。

『俺の妻になにか?』

 彼はなにを言ったのか。低く冷淡さを感じさせる声音に、目の前のふたりの勢いが削がれる。
 彼が怒っているのは、背中越しにひしひしと伝わってくる。こんなところで騒ぎになってはいけない。なにかがあれば、和也さんの迷惑になる。

 そう心配するのは私ばかりで、彼に焦る様子は見られない。余裕たっぷりな態度で、わたしを自身の方へ向かせる。それから顎に手を添えると、優しく顔を上げさせた。
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