だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
「和也さんは、私を過大評価してる」

 緊張した空気を振り払うように、苦笑してみせる。その気持ちは、彼にも伝わっているだろう。

「紗季の方こそ、自分をわかっていなさすぎる。さっきのやつらだって、紗季が綺麗すぎるから声をかけたんだ」
「そ、そんなわけないでしょ。ひとりでいたから、暇そうに見えたのよ」

 和也さんが、不満を隠さないジト目を向けてくる。
 さっきの衝撃はこれですっかり消え去り、ふたりそろって笑い声をあげた。

「それより、和也さんが英語以外にも話せるなんて知らなかった。さっきはなんて言ったの?」

 気安い空気が戻ってほっとする。
 離婚を切りだしてからは頻繁に気まずさを感じていたけれど、やっぱり彼とはフランクな関係でいたい。

「韓国語、なのよね?」
「ああ。あいつらが強引に紗季をナンパしていたから、俺の妻になにかと言ってやっただけだ」

 牽制のためのバックハグと額への口づけというオプション付きだったのは、和也さんにとって取るに足りない出来事なのか。恥ずかしかった私に対して、彼に悪びれる様子はまったくない。

 少なからずこの辺りに居合わせた人は彼の振る舞いに気づいていただろうし、注目を集めていたかもしれないと気づく。

「ね、ねえ。早く行こう」

 この場にとどまっていることに耐えかねて、熱い頬を見られないようにしながら彼を促した。
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