だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
 彼とシェアしながら、食事を楽しむ。
 つい食べ過ぎてしまったというのに、調子に乗ってさらにデザートにフルーツキャンディまで購入していた。

「ああ、美味しかった」

 食事は大満足だった。

「喜んでくれたようで、よかったよ」
「和也さんはどうだった?」

 私ばかりが楽しんでいたんじゃないかと尋ね返した。
 行き先も食事のメニューも、和也さんはすべて私の希望に合わせてくれた。もちろん、それは私との信頼関係を取り戻す手段のひとつだとわかっている。

 でもこの先も彼と一緒にいるのなら、私に気を使うばかりの一方的な関係ではいたくない。そう思えたのは、私がふたりの関係を前向きに捉え始めていたからなのだろうか。

「もちろん。この旅を計画していたとき、いろいろと調べているうちに俺も行ってみたいと思っていたんだ」

 和也さんが韓国へ来たのは初めてでないはず。ただ、こういう場所は未経験だったかもしれない。

 本当に?と、彼の目を覗き込む。
 高揚感と場の空気に流されて、精神的にも物理的にも距離が近くなる。
 自然な仕草でそうした私の頬を、彼の両手が包み込んだ。

「来てよかったよ。紗季とふたりでこの空間を楽しめていることが幸せだ」

 この態勢に恥ずかしさはある。
 でも、彼の口から〝幸せ〟という言葉が出てきたことに気をよくして、表情がほころんだ。

「それじゃあ、次へ向かおうか」

 席を立ち、和也さんが私の手を握った。それがあまりにも自然で、もちろん拒否はしない。
 どこへ連れて行ってくれるのか期待しながら、彼の隣を歩きだした。
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