だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
私と和也さんは恋愛感情で結ばれたのであって、決して会社同士の利害関係が一致して結婚したわけじゃない。そもそも出会ったきっかけは完全にプライベートなものだった。
まるで確認するように、心の中で何度もそう反芻する。
それでも事業の話をどこまでの人が聞いているのかわからない上に、私にだけ知らされていなかったという事実が鮮明になるにつれて不安が大きくなっていく。
「お姉ちゃんばかり狡いわよ」
私の異変に気づかず、美紅が唇を尖らせながらいつものように愚痴をこぼした。
うんざりするその振る舞いも、今だけは思考を切り替えるきっかけになってくれる。
「あんなにカッコいい旦那さんをゲットしてさあ」
「こらこら。美紅だって、これからいい相手を探していけばいいだろう」
「でもさあ……。お姉ちゃんったら、人に自慢できるような会社にポンっと入れちゃうし、オシャレな服もいっぱい持ってるし」
遅く生まれた末の娘が、両親にはかわいくて仕方がなかったようだ。いくら姉妹とはいえ美紅の物言いはずいぶん不快なものなのに、父は軽く宥めることしかしない。
「美紅。相手が私だからって、そういう言い方は失礼よ。あなたももうとっくに成人しているんだから、発言には気をつけて」
「はいはい。もう! お姉ちゃんったら、こんな日にもお説教ばっかり」
甘い両親や多忙な兄に代わって、美紅に注意するのはすっかり私の役目になっていた。
そのせいで彼女から毛嫌いされているのは気づいているし、こんな憎まれ口をたたかれるのも残念ながらとっくに慣れている。なんでもかんでも〝狡い〟と妬み、妹という立場でいろいろと強請るのはいつものことだ。
父と妹が去っていき、再び和也さんと兄の方へ視線を向ける。ちょうどそのタイミングで、ふたりは同時に笑いだした。周囲にいた兄の関係はすでにおらず、ふたりだけのやりとりだ。
和也さんに兄を紹介したのは私で、あのふたりが顔を合わせたのは知る限りその一度きりだ。
それにもかかわらず、ふたりは不自然なほど打ち解け合っているように見える。父の話から察するに、私が知らなかっただけで彼らの間にはずっと交流があったというのが正解か。
そう結論づけて、ハッとする。
まさか和也さんは、最初から兄の事業が目当てで私に近づいた……とか?
ばかばかしい妄想だと思う反面、さっきから聞こえてくる話を考えるとあながち否定できないと感じてしまう。
一年の交際期間があるのだから、そんなはずがない。そう信じたいのに、目にしている和也さんと兄の様子に、抱いた疑念はなかなか消えてくれそうになかった。
まるで確認するように、心の中で何度もそう反芻する。
それでも事業の話をどこまでの人が聞いているのかわからない上に、私にだけ知らされていなかったという事実が鮮明になるにつれて不安が大きくなっていく。
「お姉ちゃんばかり狡いわよ」
私の異変に気づかず、美紅が唇を尖らせながらいつものように愚痴をこぼした。
うんざりするその振る舞いも、今だけは思考を切り替えるきっかけになってくれる。
「あんなにカッコいい旦那さんをゲットしてさあ」
「こらこら。美紅だって、これからいい相手を探していけばいいだろう」
「でもさあ……。お姉ちゃんったら、人に自慢できるような会社にポンっと入れちゃうし、オシャレな服もいっぱい持ってるし」
遅く生まれた末の娘が、両親にはかわいくて仕方がなかったようだ。いくら姉妹とはいえ美紅の物言いはずいぶん不快なものなのに、父は軽く宥めることしかしない。
「美紅。相手が私だからって、そういう言い方は失礼よ。あなたももうとっくに成人しているんだから、発言には気をつけて」
「はいはい。もう! お姉ちゃんったら、こんな日にもお説教ばっかり」
甘い両親や多忙な兄に代わって、美紅に注意するのはすっかり私の役目になっていた。
そのせいで彼女から毛嫌いされているのは気づいているし、こんな憎まれ口をたたかれるのも残念ながらとっくに慣れている。なんでもかんでも〝狡い〟と妬み、妹という立場でいろいろと強請るのはいつものことだ。
父と妹が去っていき、再び和也さんと兄の方へ視線を向ける。ちょうどそのタイミングで、ふたりは同時に笑いだした。周囲にいた兄の関係はすでにおらず、ふたりだけのやりとりだ。
和也さんに兄を紹介したのは私で、あのふたりが顔を合わせたのは知る限りその一度きりだ。
それにもかかわらず、ふたりは不自然なほど打ち解け合っているように見える。父の話から察するに、私が知らなかっただけで彼らの間にはずっと交流があったというのが正解か。
そう結論づけて、ハッとする。
まさか和也さんは、最初から兄の事業が目当てで私に近づいた……とか?
ばかばかしい妄想だと思う反面、さっきから聞こえてくる話を考えるとあながち否定できないと感じてしまう。
一年の交際期間があるのだから、そんなはずがない。そう信じたいのに、目にしている和也さんと兄の様子に、抱いた疑念はなかなか消えてくれそうになかった。