だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
 彼は、今の私を見て褒めてくれるだろうか。
 ふたりの関係が微妙な状態にあるとはいえ、私はいつだって彼にはよく見られたい。

 どんな反応をするだろうかと想像して、浮かれながらもわずかに緊張していた。

 案内された先に、和也さんの背中が見えてくる。どうやら彼は、持参した本を読んでいたらしい。

 私の気配に気づいて、こちらから声をかける前に和也さんが振り返る。
 目が合った瞬間、和也さんが驚いた顔になる。なんだか気恥ずかしくて、すぐさま視線を逸らした。

 わずかな間をおいて、和也さんが立ち上がった気配がする。それから彼は、足早にこちらへ近づいてきた。
うつむいていた私の視界に、和也さんの靴が映り込む。

「ああ、紗季」

 感動した口調で私を呼び、頬に手を添えて顔を上げさせる。

「綺麗だ」

 彼の熱っぽい視線に、たまらず顔が熱くなる。
 褒められたいと望んでいたはずなのに、実際にそうされると恥ずかしくてたまらない。羞恥心に襲われて、瞳がじわりと潤んだ。

「俺の腕の中に、ずっと隠しておきたい」

 そう言いながら、和也さんは本当に私を抱きしめてしまう。

 背後に控えるお店のスタッフにどう見られているのか。居心地が悪くなって身を小さく捩ったが、彼の腕は緩まなかった。
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