だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
 少し路線は違うものの、私たちが新しく立ち上げるブランドとコンセプトが似ている気がする。こういうちょっとしたオシャレを工夫をすることで、オフィスでもプライベートでも着られるものを目指している。

 違う点といえば、このお店で扱われているものがモノトーンだということ。私たちのブランドでは、様々な色合いのものを提案していく。

 新ブランドについては、和也さんにも話せる範囲で明かしている。その上でここへ連れて来てくれたのは、観光目的だけではなくて私の仕事に役立つだろうと踏んだからか。

 半歩後ろに立つ和也さんを、そっと振り返る。いつからそうしていたのか、彼は笑みを浮かべて私を見つめていた。
 その甘い表情につい呆けそうになりかけて、ハッとする。

 彼がここに連れて来てくれた狙いはともかく、入店からしばらく、私は仕事目線で熱中して商品を眺めていた。おかげで、和也さんの存在が意識の外になっていた。

「気に入ったのはあったか?」

 全部だと答えたくなるのを、ぐっとのみ込む。

「ごめんなさい。すっかり集中しちゃって」
「かまわない。紗季の仕事の参考になるのなら、連れて来てよかったよ」

 やっぱりそうだったかと、どこまでも私を思いやる彼に胸が温かくなる。

「さあ、紗季。仕事の参考にするのもいいが、紗季に似合う服を探そう。と言っても、ここで選ぶのは、会社用になるかな」

 私の腰に添えた彼の手が、商品を見るように促してくる。
 購入するのは明日の服ではなかったのかと思いつつ、興味の方が勝って彼に従った。

「これなんて紗季に似合いそうだ」

 そう言いながら、和也さんがボウタイ付きのブラウスを掲げた。

 リボンは少し太めで、片結びにすれば胸より下まで届きシックな印象になりそうだ。ボリュウムがあるから、首もとで蝶々結びにしたら華やかにもなるだろう。

 いろいろと想像している間に、和也さんが同じようなデザインのワンピースを見つけて並べて掲げた。一枚でサラリと着られるもので、ブラウスよりもいっそうプライベート感が強くなる。
 どちらもひと目で気に入ったが、思った以上に高額だ。
< 82 / 141 >

この作品をシェア

pagetop