だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
「せっかくここまで来たんだから、遠慮は不要だ。どれも一点ものなら、今を逃したらもう二度と出会えないかもしれない」

 そう言われると惜しくなって、チラッと商品を見る。
 背後から私に近づいた彼が、耳もとでささやく。

「俺に、紗季を着飾らせてくれないか」

 その言い方は狡いし、心地よい低音に体がゾクゾクする。
 
 振り向いた私に、彼が希うような視線を向けてくる。こんなふうにされて、断れるはずがなかった。
 絆されるように小さくうなずくと、和也さんは笑みを深めてあれこれ商品を手に取り始めた。

「これと、これ。ああジャケットはこっちの方が合いそうだ」

 どうしてここまで私の趣味を把握しているのかというほど、ぴったりなものばかりをピックアップしていく。
 手渡された順に試着をして、彼に披露した。

「よく似合っている。ああ、そっちもいいな」

 全部買おうと言いだした和也さんをなんとか止めて、その中から数着に絞り込んでいく。
 ブラウスが三着とワンピースを一着。それからパンツを二本と、さらにジャケットも一着。最終的にそれだけの購入を決めた和也さんは、とにかく満足そうだ。

「これでよろしく」

 本当はもう少し絞ろうと思っていた私を笑顔で制して、さっさと支払いを済ませてしまった。

「ありがとう。たくさん買ってもらっちゃって、なんだか申し訳ない」

 店外に出て、小さくこぼす。

「紗季に似合うものは、なんでも買いたくなるんだ。俺の願いを叶えさせてよ」

 目もとを緩めてそんなふうに言う。

 もので私を釣ろうとしているのかと嫌な見方をしてみたが、彼に下心は感じられない。あるのはただ、私を喜ばせたいというまっすぐな思いだけだ。

「ありがとう」

 もう一度口にしたお礼は、さっきよりも温かな声音になっていた。
< 83 / 141 >

この作品をシェア

pagetop