だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
 たくさん買ってあげたからと、和也さんは引き換えになにかを要求したりはしない。私がこうしてお礼を言うだけで、うれしそうに顔を綻ばせる。

 和也さんを利用するつもりは微塵もないけれど、こんな顔を見せられたら旅の間だけは彼の好きなようにしてほしいと思う。

「どういたしまして。さあ、次は明日の服だな」

 手を引かれて、素直についていく。
 さっき買ったものでいいと言いかけて、なんとか踏みとどまった。

「それも、俺が選んでもいいか?」
「もちろん」

 和也さんはセンスがいいから、任せてしまって問題ない。
 そう安易に受け入れたことを、すぐに後悔する。

 次に訪れたのは、ブランドショップが多数入ったデパートだ。いくらカジュアルなものを見るといっても、ここで売られている商品はどれも絶対に高価なはず。
 そんな私の不安をよそに、和也さんは次々と店を回っていく。
 結果的に明日の服だけにとどまらず、コスメやアクセサリーまで買ってもらってしまった。

 その後はレストランで夕飯を済ませて、今夜泊るホテルに向かう。
 和也さんの会社と提携をしているところのようで、外観からかなりハイクラスだとわかる。散財についていろいろと思うところはあるけれど、今日は特別だからと自分を納得させた。

「先にシャワーを浴びてくるか?」
「少し休んだら、入ってこようかな」

 一日の疲れを感じてソファーに座る。
 和也さんもゆっくりすればいいのに、私のためにさっさとお風呂の準備に向かってしまう。自分でやると言いそびれて、その背中を見送った。

 申し訳なく思いつつ、室内をそっと見回す。
 ずいぶんと豪華な造りになっている。今いる広いリビングスペースの向こうには、寝室が二部屋もあった。おそらく、スイートルームなのだろう。
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