だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
 自宅じゃないという特別な環境に、妙にそわそわする。

 なにかを期待しているわけじゃないし、たくさん買ってもらったからどうこうという話でもない。それはわかっているけれど、彼の甘くて情熱的な一面に触れ続けてきたせいで、どうしてもこの後のことを意識してしまう。

「ほら、入っておいで」

 準備が整い、先に浴室を使わせてもらう。

 いつもより念入りに体を洗ったのは、備え付けられていたボディーソープの香りが自分好みのものだったからだと、誰にともなく言い訳をする。
 どんな格好で出て行けばいいのかと悩みかけて、そうじゃないと首を振る。

 そんな葛藤を悟られないように、なに食わぬ顔をしてリビングに戻った。
 私と入れ違いに、彼も入浴を済ませる。

 いよいよ寝ようかとなって、当然のように同じ寝室へ入った。
 先に私をベッドへ上げると、和也さんもその隣に横たわる。

「きょ、今日は、いろいろとありがとう。プライベートジェットには、さすがにびっくりしたよ。料理は美味しかったし、エステも大満足だった。いろいろと買ってくれたのもうれしい。服は月曜から早速着ていくから」

 なんだか緊張して、矢継ぎ早にしゃべる。この状況を意識しすぎなのがあからさますぎて恥ずかしい。止めたいのに、口が勝手動いてしまう。

「それに、こんな素敵なホテルまで手配してくれて」
「紗季」

 こちらへ体を向けた和也さんが、私の唇に人差し指を当てる。たったそれだけのことで、ドキリと胸が高鳴った。

「紗季が俺を夫として認めてくれるまでは、なにもしない」

 私の心の内など、彼に見透かされているのだろう。
 羞恥に瞳を潤ませながら、コクコクとうなずいた。
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