だって結婚に愛はなかったと聞いたので!~離婚宣言したら旦那様の溺愛が炸裂して!?~
「けれど、認めてもらうための努力はこれからも続けていくつもりだ」

 和也さんが不穏な笑みを浮かべる。そのまま唇をそっとなぞられて、背中がゾクリとした。

 色気を含む妖艶な彼の視線に、熱に浮かされたようにぼんやりとする。その間に、和也さんがぐいっと私を引き寄せた。
ハッと気づいた頃には、いつものように彼の腕の中に抱きしめられていた。

「紗季。これまでもこれからも、紗季だけを愛してる」

 鼓動がひと際大きく跳ねる。

「絶対に手放さない」

 宣言とも懇願ともとれる口調で言いながら、和也さんは私を抱きしめる腕に力を込めた。

「おやすみ」

 けれど、無理に答えを求めはしない。それが、もどかしくてたまらなかった。

「お、おやすみ、なさい」

 全身が熱くなっているのは、和也さんに気づかれていないだろうか。

 少しくらい、触れてほしかった。
 そんな考えが浮かんで、慌てて打ち消す。

 最近の私は、ただ意地になっているだけなのかもしれない。疑念を抱いて離婚を切り出した手前、引っ込みがつかなくなっている部分もあるとわかっている。

 もっと自分の気持ちに素直に向き合いたい。
 たぶん答えはもうすぐ出せるのだろう。もしくは、もう出ているのかもしれない。
 あとは彼と一生一緒にいると、私がもう一度覚悟を決めるだけなのだろうとそっと瞼を閉じた。





< 86 / 141 >

この作品をシェア

pagetop